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歯磨きをすると歯ぐきが痛い・血が出る方へ ― 実は「磨き続けること」が大切です
「歯ブラシを当てると歯ぐきが痛い」「血が出るので、その部分は避けて磨いている」
当院の診療では、患者さんからこのようなお声をよくいただきます。痛みや出血があると、その部分に歯ブラシを当てないようにしたくなるお気持ちはよくわかります。
ですが、その痛みや出血の多くは、歯ぐきに炎症が起きているサインです。炎症を落ち着かせるには、汚れが残っているところに毛先をしっかり当てて、力を入れずに磨き続けることが大切です。
痛みや出血の原因は「磨き残し」
歯と歯ぐきの境目に汚れ(歯垢・プラーク)が残ると、その中の細菌に体が反応して、歯ぐきに炎症が起こります。これを「歯肉炎(しにくえん)」といいます。
炎症が起きた歯ぐきは赤く腫れて、もろくなっています。そのため、歯ブラシが軽く触れただけでも、痛みや出血が起こりやすくなります。
「磨いているつもり」でも、当たっていないことがあります
毎日磨いているつもりでも、歯ブラシが歯の磨きやすいところばかりに当たっていて、歯ぐきとの境目には当たっていないことがよくあります。特に痛みがある方は、無意識にその部分を避けてしまいがちです。
痛いから避ける → 汚れが残る → 炎症が強くなる → さらに痛くなる
この悪循環を断ち切るには、痛みや出血がある場所にこそ、きちんと毛先を当てることが大切です。
歯のお掃除は、食器洗いと同じです
食器を洗うとき、汚れが残りやすいのは、コップの底や器のふちの裏など、スポンジが届きにくい隅っこですよね。歯も同じで、歯と歯の間、歯ぐきとの境目、奥歯、見えにくい裏側に汚れが残ります。
では、食器にこびりついた汚れは、そーっとなでるだけで落ちるでしょうか。なかなか落ちませんよね。たわしなどでしっかりこすって、ようやく落ちることもあります。歯の汚れもねばねばと歯にくっついているので、汚れのある場所に毛先をしっかり当てて、こすり落とす必要があります。
また、食器は使ってから時間を置くほど、汚れがこびりついて落ちにくくなります。すぐに洗えば、簡単に落ちますよね。歯の汚れも同じです。時間がたつほど落ちにくくなり、さらに放っておくと、歯ブラシでは落とせない「歯石」に変わってしまいます。汚れがついたら、なるべく早めに落とすことが大切です。
こうして日常の家事に置きかえて考えてみると、皆さんが当たり前だと思っていることが、意外と歯にもそのまま当てはまります。逆に、食器洗いなら「それでは汚れは落ちない」と誰もがわかることを、歯のお掃除ではついやってしまっている、ということも少なくありません。
たとえば、洗口剤(マウスウォッシュ)。もちろん有効な方法のひとつです。でも、こびりついた汚れのある食器に、ひたすら水をかけ続けていても、なかなか落ちませんよね。頑固な汚れは、やはりこすって落とす必要があります。歯も同じで、洗口剤だけでは落としきれません。やはり基本はブラッシングです。
さらに、細いコップの底には柄の長いブラシを使うように、歯と歯の間にはフロスや歯間ブラシ、奥歯のいちばん奥にはワンタフトブラシなど、場所に合った道具を使うと効果的です。
ただし、歯ぐきは食器よりもずっとデリケートです。食器を洗うときのように、たわしで力まかせにゴシゴシこすると、歯ぐきを傷つけてしまいます。
大事なのは「磨きたいところにしっかり当てる」こと
「やさしく磨きましょう」とよく言われます。ですが実際には、やさしくを意識するあまり、歯ブラシがほとんど歯に当たっていない方が意外と多くいらっしゃいます。
意識していただきたいのは、「自分が磨きたいところに、毛先をしっかり当てる」という感覚です。「今はこの歯の境目」「次は歯と歯の間」と一か所ずつ意識して毛先を当て、小刻みに動かしましょう。
力加減の目安は、歯と歯の間にも、歯ブラシの毛先がしっかり当たる強さです。それ以上の力は必要ありません。ご自分の力加減が合っているかどうかは、ぜひ一度、歯科医院でチェックを受けてみてください。
「当てる場所はしっかり、力は入れない」。これが、歯ぐきを傷つけずに汚れを落とすコツです。
磨き続けることで、歯ぐきは変わっていきます
痛いからといって磨かずにいると、炎症は悪化していきます。そのままにしておくと、歯を支える骨が溶けていく「歯周病」へ進んでしまうこともあります。
一方、歯肉炎の段階であれば、毎日の歯磨きで改善が期待できます。歯磨きをやめると数週間で歯ぐきに炎症が起き、再開すると健康な状態に戻っていくことは、古くから研究でも確かめられています。
磨き始めの数日は、出血することもあります。それは、これまで汚れが残っていた場所を磨けている証拠でもあります。続けていくと、多くの場合、1〜2週間ほどで出血や痛みが少しずつ減っていきます。
磨き方のポイント
- 歯ブラシは「ふつう」の硬さを選ぶ:やわらかすぎる毛先では、こびりついた汚れが落ちにくくなります。逆に、かたすぎる歯ブラシは汚れは落ちやすいものの、歯ぐきを傷つけるおそれがあります。毛先が開いたら交換しましょう。交換の目安は約1か月です。
- 毛先を歯と歯ぐきの境目に当てる:歯ぐきが腫れている方には、毛先を約45度の角度で当てる「バス法」がおすすめです。
- 力を入れずに小刻みに動かす:歯と歯の間にも毛先がしっかり当たる強さが目安です。鉛筆を持つように握ると、余計な力が入りにくくなります。1本の歯につき、約20回くらい動かしましょう。
- 歯と歯の間や奥歯は、専用の道具も使う:歯と歯の間にはフロスや歯間ブラシ、歯ブラシが届きにくい奥歯のいちばん奥にはワンタフトブラシが便利です。サイズや使い方は、お気軽にスタッフにおたずねください。
歯周病の治療(歯ぐきの治療)は、お家でのケアが大切です
歯周病の治療(歯ぐきの治療)では、歯科医院でのお掃除だけでなく、患者さんご自身によるお家での毎日のケアがとても大切です。
歯科医院でどれだけ丁寧にお掃除をしても、お家での歯磨きができていなければ、歯ぐきはなかなか良くなりません。歯ぐきの健康は、歯科医院と患者さんとの二人三脚でつくっていくものです。
そのため当院では、磨き方だけでなく、「なぜ歯磨きが必要なのか」「どこを、どのように磨くと良いのか」という理由や意味も、できるだけわかりやすくお伝えするようにしています。
歯ぐきからの出血は、虫歯の治療にも影響します
実は、歯ぐきからの出血は、虫歯の治療にもよくない影響を与えてしまいます。
虫歯の治療では、詰め物や被せ物を歯にくっつけるために接着剤を使います。ところが、治療する場所に血や歯ぐきからの浸出液がにじんでくると、接着剤がしっかりくっつかず、治療した詰め物や被せ物が数ヶ月で外れたり、隙間からむし歯が再発したりすることがあります。
また、被せ物などを作るための型取りでも、出血があると歯と歯ぐきの境目が正確に写し取れず、ぴったり合うものが作りにくくなります。さらに、腫れていた歯ぐきは、炎症が治まると引き締まって形が変わります。腫れたままの状態で型を取ると、治療後に被せ物の境目が合わなくなることもあります。
そのため当院では、虫歯の治療の前に、歯周病の治療をある程度進めてから行うようにしています。「早く虫歯を治してほしいのに、どうして先に歯ぐきの治療をするの?」と思われるかもしれませんが、治療を長持ちさせるための大切な順番なのです。
だからこそ、お家でのケアで歯ぐきを整えていくことが、虫歯の治療をスムーズに進めることにもつながります。
当院の歯磨き動画をご覧ください
当院では、正しい歯磨きの方法を、わかりやすい動画でご紹介しています。この記事とあわせてぜひ参考にしていただき、毎日の歯磨きに役立ててください。お家でのケアが変わると、お口の中はより良くなっていきます。
▶ 歯磨き方法の動画(当院コラム)
https://www.awataguchi-dc.com/column/20220926/
▶ バス法(歯ぐきが腫れている方・歯周病の方におすすめ)
https://www.youtube.com/watch?v=9lQjzGIutOo
▶ スクラビング法(お子さまから大人の方までおすすめ)
https://www.youtube.com/watch?v=Ot7u_3An1Gw
こんなときは、早めにご相談ください
歯磨きのときの痛みは、知覚過敏や口内炎、虫歯など、歯ぐきの炎症以外が原因のこともあります。次のような場合は、自己判断せずに受診してください。
- 正しく磨いても、2週間ほどで良くならない
- 歯ぐきが大きく腫れている、膿が出ている
- 強い痛みや発熱がある
- 出血がなかなか止まらない
- 冷たいものや歯ブラシが当たると、歯がしみる
さいごに
歯磨きのときの痛みや出血は、「ここに汚れが残っていますよ」という歯ぐきからのサインです。痛い場所を避けるのではなく、今日から少しずつ、磨き方を見直してみましょう。
「自分の磨き方や力加減で合っているのかな?」と不安な方は、お気軽にご相談ください。当院では、患者さんご自身がしっかり磨けるようになることを大切に、一緒に歯ぐきの健康づくりをサポートいたします。
▶ お電話でのご相談・ご予約
092-555-6972(患者様専用)
受付時間:9:00~12:00 / 13:45~17:00
休診日:木曜・日曜・祝日(祝日のある週の木曜日は診療いたします)
